美術学校は出てみたけれど絵を描き続ける事はむずかしい事です。
おせっかいからはじまったこの展覧会も、このメンバーでの三年間で終わらせる事にします。私が六十五才になった時です。
十五名との出合いがあり、私との三年間のつきあいが終わった時、次の後輩を三名見つけるという方法で続けられました。
一年目より二年目、二年目より三年目と成長できればうれしいのですが。

伊藤髟耳　

　展覧会を終えて

一年一回というペースで三年間開催する事を予定している本展も、なんとか今回の第一回目をスタートする事が出来ました。発表にあたり私達は伊藤髟耳先生のアトリエにて、いろいろな話し合いをしました。絵にはどんな役割があるのか、絵を強くする画面構成の話、手作りの食べ物の話、家族の話、今回設けた展覧会のテーマ「動物」についてなど、様々な話をアトリエでしました。

テーマを設けた理由についてお話します。
まず、私たち（江口暢弥　清水智和　林克彦）はこの展覧会の誘いを受けて初めて先生とお会いしました。お互い初めて会っていきなり一緒に展覧会をするわけですから、私たちも戸惑いましたし、先生も不安だったでしょう。

そんな溝を埋めるように、二月に一・二度くらい私たちは先生のアトリエにお邪魔して、展覧会の話だけでなくいろいろな話をしました。先生はとても斬新な考え方をされる方で、私たちは話し合うたびに触発され勉強になりました。まずこの展覧会の会自体が、今の日本画界では例をみない企画だと思いました。院展の同人の方が見ず知らずのたまたま出会った若者と一緒に展覧するわけですから。

どんな展覧会にしようという話になった時、私たちが考えたのが、みんなが同じテーマで絵を描くという単純なものでした。もちろん先生も例外ではありません。もし塾などの展覧会だったら生徒が先生の絵のモチーフを提案するなんてありえないことでしょう。「動物」になったわけは、まず観る側にも親しみがあるテーマであるということと、みんなが描きなれていないものをあえて挑戦してみよう、という理由からです。

来年２００２年のたまたま展のテーマは「ひと」です。これは先生からの提案です。複雑な人体の造形、存在感、個と向き合う姿勢、どれもが絵を描く者にとって興味深く、かつ永遠の課題のような重要なテーマだと思います。一回目を終え、今回学んだことをふまえ、また来年に向けて一年間がんばって勉強していきたいと思っておりますので、来年の「たまたま展」を楽しみにしていただけたら幸いです。

メンバー一同

　たまたま展について　　　　　／　江口暢弥　清水智和　林克彦　

僕達が伊藤髟耳さんとはじめてお会いしたのは、去年の6月ごろでした。学生の頃の友人に、松坂屋で伊藤髟耳さんと展覧会をしませんか？という誘いを受けたのがきっかけです。

この展覧会のメンバーになるには約束事がありました。まず3年間続けられる事、多摩美術大学の卒業生であること、男であること（この理由はわかりません）、3年後、次のメンバーとなる後輩を、伊藤髟耳さんに紹介する事。

この約束事からもわかるように、僕達は「たまたま」知り合いました。よくこのような展覧会があると、塾の展覧会だとか、公募団体の関係の展覧会にみられてしまいますが、伊藤髟耳さんが僕達を選んだわけではなく、僕達が立候補したわけでもありません。「たまたま」なのです。

伊藤髟耳さんは、はじめてお会いした時「師弟関係というのではなく作家同士のおつき合いをしましょう」とおっしゃいました。だから「先生とも呼ばないで下さい」ともおっしゃいました。さすがに僕達も「伊藤さぁ、」と呼び捨てにできるわけでもなく「伊藤さん」というのもおかしいので、結局「先生」と呼ぶ事になりました。

伊藤先生は30も年下の僕達と、作家同士の対等の関係を希望されていたので、僕達三人も展覧会について考え、テーマを設けたらどうでしょう、と先生に持ちかけました。そう、今回のテーマは『動物』です。

三人とも普段、動物を描く事のないメンバーですが、悪戦苦闘のすえ発表にいたりました。宜しかったら是非ご高覧下さい。